
近年、さまざまな分野で量子技術の活用が試行され、特に量子アニーリング方式は物流業界の配送ルート最適化等、組合せ最適化の分野で導入が進んでいます。一方、半導体業界においては、製造工程が大規模になるほど、組合せ数が指数関数的に増加し、さらに制約条件が多数あるため最適解を得ることが難しく、古典コンピュータでも近似的に演算可能な規模の工程における導入にとどまっていました。そのため、従来は基本的な計算ルールをベースに、蓄積した知見やノウハウを活用してオペレーション(工程の割り付け)を行うことが一般的でした。
ロームとQuanmaticは、2023年1月よりEDS工程*1におけるさまざまな制約条件を考慮した量子ソリューションを用いたオペレーションシステムの検討を開始。Quanmaticが持つ、早稲田大学・慶應義塾大学の研究に基づく量子計算技術効率化のプロダクト群や、量子と古典計算技術を駆使した計算フレームワーク及び専門的な定式化技術に、これまでロームが蓄積してきた膨大な知見とノウハウ、各種データを融合させることで、2023年9月にプロトタイプの構築に成功しました。本プロトタイプをロームの国内外の工場に試験導入し検証した結果、稼働率・納期遅延率などのターゲットとする指標をそれぞれ数%ずつ向上できるという実証成果が得られました。
そして2024年4月から本格導入を開始したROHM Electronics Philippines, Inc.(フィリピン)では、セットアップ*2時のロス*3を従来比40%削減実現しました。
アルゴリズム化により計算時間も大幅に短縮されるため、製造条件の変更に合わせたタイムリーかつ最適なオペレーションが可能となっています。
さらに両社は、より大規模で複雑な前工程への量子計算技術導入も検討を進めており、2025年1月にプロトタイプを完成し、2025年4月にはローム浜松の一部エリアで実証実験に成功しています。
